ペットの肖像画の歴史
古代エジプトの猫から「うちの子イラスト」まで

写真文化・記録

水彩風で描いた柴犬のイラスト

うちの子を絵に残したい。その気持ちは、実は数千年前から人類が抱き続けてきたものです。古代エジプトの壁に描かれた猫から、貴族の肖像画に寄り添う犬、浮世絵で遊ぶ猫たち、そして現代のうちの子イラストまで。この記事では、人と動物と絵の、長い長い物語を散歩してみます。

古代エジプト: 猫は描かれる神だった

動物の絵の歴史をさかのぼると、最初の主役級スターは古代エジプトの猫です。エジプトでは猫は神聖な動物とされ、猫の姿を持つ女神バステトが信仰されていました。壁画や彫像には、椅子の下でくつろぐ猫、狩りを手伝う猫の姿が数多く残されています。

興味深いのは、神としてだけでなく、家族の一員としての猫も描かれていたことです。飼い猫に首飾りをつけ、亡くなれば手厚く弔ったという記録も残っています。「大切な猫を形に残したい」という気持ちは、数千年前から本質的に変わっていないのです。

ヨーロッパ: 犬は忠誠のシンボルとして肖像画へ

中世からルネサンスのヨーロッパでは、肖像画の中に犬がたびたび登場します。当時の絵画で犬は忠誠や信頼の象徴とされ、夫婦の肖像や貴族の家族画の足もとに、当たり前のように描き込まれました。

やがて時代が進むにつれて、犬は「象徴」から「その犬自身」として描かれるようになっていきます。王侯貴族が、お気に入りの猟犬や愛玩犬の単独の肖像画を注文するようになったのです。名前を持ち、個性を持った一匹の犬のための絵。現代のペット肖像画の直接のご先祖さまです。

水彩風で描いた柴犬のイラスト
「その子自身を描く」文化は、貴族の愛犬肖像から始まりました。

ヴィクトリア朝: ペット肖像画の黄金時代

19世紀のイギリス、ヴィクトリア朝は、ペット肖像画の一大ブームの時代でした。ヴィクトリア女王自身が大の動物好きで、愛犬たちの肖像画を数多く注文したことが知られています。女王のお抱えとして活躍したランドシーアのような動物画家は、当時のスター画家でした。

産業革命で豊かになった市民層にもこの文化は広がっていき、家庭の愛犬・愛猫を画家に描かせることが、ひとつのステータスであり愛情表現になりました。「ペットは家族であり、家族は絵に残すものだ」という感覚が、社会に根づいた時代です。

日本: 浮世絵の中で遊ぶ犬と猫

日本の絵の中にも、犬と猫は古くから登場します。平安の絵巻物には貴族に愛された猫の姿が描かれ、江戸時代の浮世絵では、庶民の暮らしのすぐそばにいる犬や猫たちが、実に生き生きと描かれました。

中でも有名なのが、江戸の浮世絵師・歌川国芳です。大の猫好きとして知られ、常に何匹もの猫と暮らし、懐に猫を入れて絵を描いたという逸話が残るほどの愛猫家でした。猫を人に見立てた戯画や、猫だらけの作品を数多く残し、その愛らしさは現代の猫好きをも魅了し続けています。日本人の「猫を愛でて描く」文化の、偉大な先輩です。

ちいさな余談: 招き猫と犬張子

日本の動物と造形の文化には、絵以外の系譜もあります。商売繁盛の縁起物として親しまれてきた招き猫、子どもの健やかな成長を願う犬張子。どちらも「犬猫の姿に願いを込める」文化で、江戸時代から庶民の暮らしに寄り添ってきました。

つまり日本人は、描くだけでなく、飾って願いを託す形でも犬猫を愛してきたわけです。うちの子のイラストを玄関やリビングに飾る現代の習慣は、この縁起物文化ともどこかでつながっているのかもしれません。

写真の登場と、絵の役割の変化

19世紀に写真が発明されると、「姿を記録する」役割は少しずつ写真に移っていきます。20世紀には家庭にカメラが普及し、ペットの姿は特別な注文をしなくても、誰でも手軽に残せるものになりました。

では、絵は不要になったのでしょうか。むしろ逆でした。記録を写真が引き受けたことで、絵は「解釈」や「愛情表現」としての役割に純化していったのです。事実を写すのは写真、想いを込めるのは絵。この役割の分業は、写真誕生から百年以上を経た現代まで、しっかりと続いています。

そして現代: 「うちの子イラスト」の時代へ

かつて王侯貴族だけのものだった愛犬・愛猫の肖像は、いまや誰もが気軽にオーダーできるものになりました。スマホの写真から、数日で、手の届く価格で。デジタル技術と、それを扱う描き手たちが、数千年の歴史をぐっと身近にしてくれたのです。

SNSのアイコンに、リビングの壁に、記念日の贈り物に。形は変わっても、根っこにあるのはエジプトの昔から変わらない、「大切なこの子を、形に残したい」という気持ちです。あなたがうちの子のイラストを作るとき、エジプトの猫から続く数千年の系譜に、いちばん新しい1ページが加わることになります。

歴史を知ると、一枚の見え方が変わる

肖像画の歴史を知ってから、うちの子のイラストを眺めてみてください。それは単なるかわいい絵ではなく、王侯貴族の愛犬肖像や国芳の猫たちと同じ、「愛が絵になったもの」の最新形です。

うちのこびんでは、その現代版の一枚を、初めての方限定で1枚無料でお作りしています。数千年の伝統に、あなたの子も仲間入りしてみませんか。水彩というタッチが選ばれてきた理由は水彩の魅力の記事でも紹介しています。

よくある質問

昔のペット肖像画は、どこで見られますか?

国内外の美術館の西洋絵画コーナーでは、肖像画の中の犬たちや動物画を見つけることができます。浮世絵の展覧会では、国芳の猫の作品が人気の定番として、たびたび登場します。美術館で「絵の中の犬猫探し」をするのは、ペット好きならではの鑑賞法としておすすめです。難しい美術史の知識がなくても、犬猫が見つかった瞬間の嬉しさは保証付きです。

犬と猫以外の動物も描かれてきたのですか?

もちろんです。馬は権力と富の象徴として肖像画の定番でしたし、小鳥やうさぎも古くから愛玩の対象として描かれてきました。現代のうちの子イラストが犬猫に限らず小さな家族全般に開かれているのも、この長い伝統の続きといえます。

自分でも描いてみたくなりました

その気持ちこそ、数千年続いてきた伝統への、最高の参加方法です。絵心ゼロからの始め方を描き方入門の記事にまとめています。どんな名画家も、最初は一枚目から始めました。あなたの一枚目も、今日この日から描き始められます。

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